Tourism passport web magazine

学校法人 大阪観光大学

〒590-0493
大阪府泉南郡熊取町
大久保南5-3-1

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大阪観光大の学生や教員が運営する WEBマガジン「passport」

Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”

「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、 大阪観光大学がお届けするWEBマガジンです。
記事を書いているのは大阪観光大学の現役の教授や学生たち。 大学の情報はもちろん、観光業界や外国語に興味のある方にも楽しんでいただける記事を定期的に公開していきます。

佐久間スタジオ(ゼミ) 学外授業 | 住吉大社?住吉公園見学

2022年6月18日に、スタジオ(ゼミ)の授業の一環として、住吉大社?住吉公園(大阪市住吉区)を訪ね、教室で学習した内容を確認するとともに、現地で新たな情報を集めました。
 住吉大社は、全国に約2300社あるとされる住吉神社の総本社であり、大阪を代表する神社の一つです。その歴史は古く、『万葉集』(古代日本の歌集)には航海に関する住吉大社の神のおつげ(神言)が歌われています。また、かつて大社の近くにあった住吉津(すみのえのつ)と呼ばれた港からは遣唐使(古代日本の朝廷より中国?唐王朝に派遣された外交使節)が出発しました【写真1】。このように住吉大社は、古代から航海の守護神を祀る神社として厚く信仰されてきました。

【写真1】

学生は反橋(そりはし)を渡り【写真2】、住吉三神(住吉大神:男神)と神功皇后(じんぐうこうごう:女神)を祀る本宮を見学しました。本宮の屋根の上に取り付けられた千木(ちぎ)と呼ばれる飾りの形が、男神を祀る本宮と女神を祀る本宮との間では異なることを確認しました。

【写真2】

また、楠の御神木の近くにある絵馬の奉納所では、どのような祈願文が絵馬に書かれているのかを調べました【写真3】

【写真3】

さらに、パワースポットの「五所御前(ごしょごぜん)」では、「五」?「大」?「力」が書かれた石を拾ってみました【写真4?5】。これらを集めてお守りにすると願い事が叶うとされます。

【写真4】
【写真5】

その後、田植えが済んだばかりの「御田」(おんだ)を見学していると、どこからか太鼓の音が聞こえてきました。振り返ると猿を連れた芸人の方がおられました。そこで、日本の大道芸の一つ「猿まわし」の演技を見ることにしました。「ミヤコ」という名前のお猿が、竹馬に乗って障害物を越えたり【写真6】、箱の上で逆立ちをしたりしました【写真7】

【写真6】
【写真7】

「猿まわし」は、かつて「猿曳(さるひき)」とも呼ばれ、日本では12世紀頃から行われてきました。また、猿に厩(うまや)で馬を守らせて病や災いを除くという民俗信仰もあり、その起源は中国やインドにまでさかのぼるとされます。さらに、近世では、正月に大名などの厩(うまや)で祈祷(きとう)が行われる際、猿曳の芸人に猿を舞わせたとも伝えられています。住吉大社には、かつて「神馬」が厩に飼われていたので、昔も今と同様に猿まわしが行われていたのではないかと推測されます。
 この他、境内には、江戸時代から昭和までの石の燈籠(とうろう)が数多く残されています。学生はそれらに刻まれた奉納者名や奉納年月日について調べました。奉納者には、大阪の船舶関係者のみならず、「和州吉野郡 材木商人中」や「江戸 日本橋釘店」などがあり、奈良や東京の商人との交流もうかがわれます。最後に、住吉大社の近くにある住吉公園を散策し、公園を出た所にある「住吉高燈籠」(復元)を見学しました。
 万葉の時代から今日まで、絶えることなく続いてきた住吉大社の信仰は、現代のわたしたちの心をも引きつけてやみません。このような神社の魅力について観光客に伝える方法を学生とともに考えてゆきたいと思います。

文責:大阪観光大学観光学部?教授(宗教学) 佐久間 留理子
(大学憲章2022?10の約束II)

【参考文献】
上原佳久『まちの記憶 住吉大社かいわい』 / 朝日新聞(夕刊)記事(2021年5月17日)
森口隆次、他『住吉さん─社宝と信仰─』(展覧会目録第98号) / 大阪市立博物館(1985)
山折哲雄(監修)『世界宗教大事典』:「猿」の項目(734頁) / 平凡社(1997)

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